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一 夢 庵 風 流 日 記

政府系金融機関

  一般会計
  所得税や消費税などを国民の公的な社会サービスに充てる
  歳入歳出のバランスを見直すことが急務であり、社会保障費の増額は必然だ。

  特別会計
  目的税という分りやすい制度、受益と負担の対応関係がはっきりしている
  名目が崩れているのにいつまでも税金を徴収している、赤字を出した場合は
  一般会計から補填しているので、国民の負担は意味なく増大。

  かなり簡略化すると、こういうメリットデメリットがあるわけだ。

  今回は、政府系金融機関について触れてみる。

  政府系金融機関は、日本政策投資銀行、国際協力銀行、中小企業金融公庫
  商工組合中央金庫、国民生活金融公庫、公営企業金融公庫、農林漁業金融公庫
  沖縄振興開発金融公庫の8つ。
  
  ちなみに住宅金融公庫は、すでに〇七年度から独立行政法人に移行が決定。

  この原資は、郵便貯金や簡易保険などの国民の資金である。
  政府系金融機関は、従来、この原資と政府の交付金などをバックに、
  「低利・長期・固定」の融資を行うことで、戦後の経済成長に貢献したといえる。

  また保守政党にとっては、政府系金融機関の主な融資対象である中小商工業者や
  農民を支持基盤として確保するという意味で重要であったし、
  それによって取り込めるメリットがあった。
  また、旧大蔵省を中心とする所轄官庁にとっては、重要な「天下り先」でもあったわけだ。

  時代が流れ、国の財政危機により政府は金融機関への補助金が継続不可能となった。
  また、政府系金融機関自身の抱える不良債権(合計約8兆~9兆?)もまた、
  隠れた赤字として深刻な問題になっている。


  政府系金融機関にメスを入れることが重要よ目されるようになった。
  1999年、日本開発銀行と北海道東北開発公庫を統合して日本政策投資銀行に、
  日本輸出入銀行と海外経済協力基金が統合し国際協力銀行が設立された。

  そして「改革」の名の下に小泉政権発足、政府系金融機関に手をつけ始めることとなる。

  小泉政権は、発足当初から「政府系金融機関の合理化」を掲げ、石原行政改革相の
  私的諮問機関「行革断行評議会」は、政府系金融機関を
  「国内向けと海外向けの2機関」に統合するという提言をまとめる。
  経済財政諮問会議も、02年12月に政府系金融機関の「廃止・民営化」など「見直し方針」決定。


  これは
  (1)リスク評価が難しい分野以外は撤退か民営化
  (2)貸出残高が国内総生産(GDP)に占める割合を将来半減
  (3)07年度末に特殊法人形態を廃止し、後継組織は統合集約

  というもので、政府系金融機関の役割を一気に縮小させようというものだ。

  結末は大銀行など民間金融機関の貸しはがし・貸し渋りが激化、
  中小企業を中心とする反発が強まり、議論が先送りされた。

  → → → 現在、改革続行内閣が成立、
  谷垣大臣が統廃合に難色を示しているが、小泉首相は統廃合を推し進めたい。



  政府系金融機関を統廃合することの最大の狙いは、
  郵政民営化案とセットになっての金融改革である。

  従来、郵貯・簡保などが資金の「入口」であり、政府系金融機関は資金の「出口」だ。

  民間大銀行系のシンクタンクは、政府系金融機関の役割は「創業時の小企業か、
  宇宙開発のような大プロジェクト」程度でよいとし、それこそが
  「健全な資本主義国家を建設するため」に必要だと言い切っている。

  要は、郵政民営化(「入口」の民間開放)に加えて「出口」をも開放(統合、民営化)することで、
  総額340兆円とされる国民の金融資産を民間に流そうということだ。
  ただ問題もあり、大銀行や外資系金融資本に明け渡す可能性も否めないことは事実。

  さらにこの改革は、公務員労働者給与の削減、行政改革という狙いもある。

  私自身も統廃合は進めて機構のスリム化をしてもらいたいのだが、問題もあることは事実だ。
  政府系金融機関の統廃合は、国民にどういう不便をもたらすか。

  政府系金融の機能が縮小・統合、民営化されれば、中小商工業者や農林水産業、
  あるいは地方の事業への融資は、「採算性」や「不良債権処理」を口実に縮小されざるをえない。
  これは大銀行が行った貸し渋り・貸しはがしの復活となってしまう。
  農林水産業は国力のためには必要不可欠なものだ。


  中小商工業者や水産業者などはこれまで以上の資金難に陥り、倒産・転廃業に追い込まれる。
  地方商店街の「シャッター通り」化はますます進み、地域経済の崩壊はいっそう進むことは間違いない。
  もちろん、中小の下で雇用されている膨大な労働者も犠牲となる。

  こういうシミュレートもあり日本商工会議所などの中小団体は
  政府系金融機関の廃止・縮小に反対し、逆にその「強化」を求めている。
  日本商工会議所が実施したアンケート調査によれば、借り手である中小企業の67%が、
  中小向け政府系金融機関統合に否定的な回答をしている。

  全国一の高失業率が改善しない沖縄県も、沖縄振興開発金融公庫の統廃合には抵抗を示している。

  中小企業や地方にとっては切実な課題なのである。

  政府内でも、岩永農相のように「民間では融資が困難だと言われる(農業への)長期低利の
  資金をどこに求めるかとなると、農林公庫が果たしている役割は大変大きい」と指摘する人もいる。

  ここで考えなければならないのは、外務省ODA問題や第三セクター問題、
  高級官僚による政府系金融機関への「天下り」を初めとする政官財の癒着や腐敗の問題是正と
  国民諸階層の問題が一緒になってしまっていることだろう。


  小泉首相は「ゼロベース」を基本としたようだ、首相の性格上、決めただろう。
  一度ゼロで見直す、これはこれで結構、しかし早めに融資を流す必要性のある肉体には
  金という血が流れるようにして欲しい。

  民間銀行がいまだに担保がないとお金が貸せない、実質的に融資できるかどうかを
  選別できる目がないアマチュアだけに
  (これは公的資金を流しすぎて生き残らせてしまったことが悪い)、
  政府系金融機関は中小企業だけではなく、
  起業家を目指す若者にとっても重要な位置を占めていると考える。

  前回までは、政府系金融機関には国民にとって必要な部分があることを書いた。
  今回は批判的な見方、内実に少し触れてみたい。

  郵貯を財源として国民にお金を貸すという金融業を行っているのを
  政府系金融機関(政府が信用保証)ということを再確認して読み進めていただきたい。


  「国際協力銀行」
  (貸出残高) 19.8兆円(政府補給金)300億円(職員数) 872人
  (トップ)篠沢 恭助(元大蔵事務次官)       (役員数) 12人

  「日本政策投資銀行」
  (貸出残高) 14.0兆円       (職員数)  1357人
  (トップ)小林 武(元大蔵事務次官)  (役員数)   17名

  「国民生活金融公庫」
  (貸出残高) 9.5兆円        (職員数) 4759人 
  (トップ)薄井 信明(元大蔵事務次官) (役員数)10名

  「商工組合中央金庫」
  (貸出残高)9.5兆円         (職員数) 4480人
  (トップ)江崎 格(元通産局長)    (役員数)不明

  「農林漁業金融公庫」
  (貸出残高)3.2兆円(政府補給金)551億円 (職員数) 929人
  (トップ)高木 勇樹(元農水事務次官)     (役員数)  8名

  「公営企業金融公庫」
  (貸出残高)25.0兆円           (職員数) 81人
  (トップ)渡辺 雄司(元自治省事務次官) (役員数) 7名

  などなど、全部まとめるのは辛いので、詳しくは公営企業金融公庫を眺めていただきたい。

  政府系金融機関の全体の貸出残高は150兆円といわれ、その4割前後
  およそ60兆円が不良債権化しているといわれているのだ。焦げ付きってやつ。


  役員報酬はだいたい、トップで年収2300万円、その他の理事で1400万円。
  また、退職金がだいたい4年間勤めて年収分支給される。
  つまり、ぶっきらぼうに言えば、建物内に4年間いれば、
  トップが1億1500万円、理事が7000万円貰えるといえるのだ。

  この金額から考えれば、公務員の平均給与660万がいかに偏っているかわかる。
  天下り組を是正して生え抜き、若い人に分配していけば給与の削減はいうまでもなく
  雇用数も確実に増加して、経済には好影響であろう。

  簡単に示すと、これらの政府系金融機関にはおよそ90人の理事がいる、彼らの報酬で
  大雑把に言えば約700人の若い人の雇用を奪っていることになるといえる。

  特殊法人全体、地方公共団体の類似団体の役員報酬が、若者5~10万人ぐらいの
  雇用を奪っているのではないかと思われる。
  雇用問題は日本の活力を減退させているとても重要な原因の一つであるのだ。

  出口ばかりが論じられるが、公務員の入り口改革で、
  いくら出口(退職後の天下り規制)改革ばかりしても、改革は頓挫するであろう。

  公務員試験廃止または準廃止して民間並みの採用制度を採り、個人給与もいくらか下げて、
  相互人材が交流するようになれば、公務員を一生涯、公のある部分で働かせる必要性はなくなる。

  もちろん、扱う仕事に応じての話だ、公の仕事すべてを交流などしていては
  プロが育たず、アマチュア集団のかたまりになり、国民が被害を被るだけ。


  前回も書いたが、政府系金融機関の働きを一言であらわすと

  政府系金融機関とは、わが国の経済や社会の発展、国民生活の安定などを目的として、
  民間の金融機関では取り扱いが困難と考えられる融資等を行うために設立された特殊法人
    ーーといえる。

  だから、政府系金融機関は、民間金融機関を補完するための機関と考えるのがノーマルだ。

  そうした政府系金融機関に対して、従来から様々な批判があった。

  「政府系金融機関が、民間の金融機関の業務を圧迫している」
  「民間金融機関の補完的な役割を果たすべき政府系金融機関が、
   民間金融機関の業務領域を侵食している」など

  の指摘が多かった。


  最大の問題は、政府系金融機関が、民間ではできないような、経済合理性をあまり考慮しない
  融資を行うことによって、社会全体の資源の最適配分を歪めてしまうことなのかもしれない。

  つまり、融資基準がどこにあるかぼやけているのだ。

  本来の社会の仕組みは、経済合理性によって経済主体が選別され、合理性の低い主体が
  淘汰されることによって、合理性の高い分野に経営資源が向かうことだ。
  そうした機能で、社会全体の効率性が確保され、経済が発展すると考えられる。

  マネタリズムではないが、倒産すべき会社は倒産すべきであるし倒産せず統合合併により
  大きくなる企業(もはや巨大な官である)に、さらに国が金を流し込めば経済促進性を遅らせ、
  失われた10年そのまんまであるのではないか?

  ただし、社会には、合理性だけで判断できないような分野が存在する。
  例えば、社会福祉や医療などは、たとえ経済合理性が低くても、それを止めてしまうと、
  国民はとんでもない事象に巻き込まれる。

  その分野は、公的な組織を作って、民間企業の補完的な機能を果たす工夫が必要であり、
  政府系金融機関とは本来、そうした公的分野の活動の一つと定義しなおすというか、
  ガチッと確認しなおした方が良いだろう。


  民間の資本蓄積が進んでいない発展途上国では、
  政府が金融事業を行った方が効率がよいという見方が一般的。
  政府系金融機関は日本固有の制度ではなく、多かれ少なかれ、どの国にもある制度。
  日本でも戦後の復興期に開発金融が有効に機能したのは事実である。

  しかし日本経済が成熟し民間資本の蓄積が進んだ現在、
  政府系金融機関の存在意義が問われているといえる。
  報道によると、8つの政府系金融機関は「個人・零細企業」「中小企業」「海外向け」など
  機能別に3つ程度に整理・統合されることが検討されている様だ。

  整理・統合後の政府系金融機関は、民間では提供できない事業にファイナンスを行う予定。

  つまり、現在の日本にも「市場の失敗」が存在し、貸付市場における失敗を
  補完するために政府系金融機関が活躍するということが前提となっている。

  たしかに貸付市場でも「市場の失敗」は発生すると思われる。

  例えば零細企業に資金需要があったとしても、民間銀行では零細企業の信用力を
  評価することができなかったり、信用評価にかかる費用がかかりすぎたりして、
  資金需要があるのに資金が回らないといったケース。
  こうした場合には政府が貸し付けを行う意義があると考えられている。

  しかし、民間金融機関が評価できない審査を政府が適切に評価できるか?
  適切な評価ができないのに政府が貸し付けを行えば、いつかは不良債権となるわけだ。

  つまり貸付が不足するという「市場の失敗」が、
  貸付が増えすぎるという「政府の失敗」に置き換わるだけ。


  「政府の失敗」は国民の資産の焦げ付きに転じ、しわ寄せは国民にくる。

  政府による貸付は、民間金融機関による貸付に補助金を加えたものに過ぎない。
  ならば、貸し付けの審査を民間金融機関が行って、政府は利子を補助するだけという考え方もできる。

  「市場の失敗」を上手く補完する工夫が求められているのではないか?


  政府が民間金融機関よりも優れた審査能力を持っているとは思えないので、
  政府系金融機関が中小企業金融を直接実施する意義は低いのかもしれない。
  むしろ、もっと民間ベースでは提供しづらい分野、すなわち環境や高齢化、
  教育分野等に政府系金融機関が活躍するフィールドがあると考えられる。



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